1947-08-15 第1回国会 参議院 司法委員会小委員会 第1号
ただ公證人とか、不動産登記官吏、或いは執達吏という者の個人責任を除きましたのは、まあ一應の初めの立案の當時は、國家のみが賠償責任を負つて、個人の賠償責任がないという頭で一應立案いたしたのでありますが、若し假にいずれにいたしましても、故意又は重大な過失の場合だけに限るということは如何なものであろうかという點と、それから今までは國家公共團體に全然責任がなかつたのを、今度は如何なる公權力の行使についても、
ただ公證人とか、不動産登記官吏、或いは執達吏という者の個人責任を除きましたのは、まあ一應の初めの立案の當時は、國家のみが賠償責任を負つて、個人の賠償責任がないという頭で一應立案いたしたのでありますが、若し假にいずれにいたしましても、故意又は重大な過失の場合だけに限るということは如何なものであろうかという點と、それから今までは國家公共團體に全然責任がなかつたのを、今度は如何なる公權力の行使についても、
○政府委員(奧野健一君) 實はその點も非常に問題になつたのでありますが、結局この法律は國家、公共團體が損害賠償の負擔をするということだけを規定すればよいので、その公務員個人の責任のことはここには觸れないという建前に規定したのでありまして、その點は結局一般解釋の問題として解釋して行くべきものだというふうに考えております。
本法案の根本的趣旨は、政府委員のご説明の通り、國家、公共團體が國民に對しての責任規定であります。國家と國民のための規定であるならば、その立場において理論的に、實際的に正しい方向に規定していかなければならぬのであります。國、公共團體の内部的事由に基いてこれを左右するということは、理由には相ならぬと考えるのであります。
殊にそれのみならず、この損害を賠償すべき主禮が國家公共團體であります。今日までわが國は官尊民卑の弊があり、國家、公共團體あるいは公務員等に對しては、國民は一歩も二歩も譲つておつた。いなむしろ多くの事例は泣き寝入りになつておつたという事實ほとんど大部分でありましよう。
従つてその際七百十五條という規定はもちろん適用がありますから、その際七百十五條の擔書によつて、無過失選任、監督に注意を怠らなかつたことを説明すれば、民法上の責任を免れることができるという趣旨でありまして、國家公共團體の公權力の行使にあたる場合につきましては、第一條で、「國又は公共團體が、これを賠償する責に任ずる。」
ただ國家公共團體の行政上の行為でありまする關係上、不法というよりも違法という感じの方が適當であろうというだけの趣旨でありまして、不法も違法も同樣であります。
だからこの法案においてはその責任義務を轉換して、國家、公共團體の方で過失がなかつたということを立證しなければ、賠償の責を免れることができないというに規定される御用意はないか。一般立證責任の原則にこの場合も從おうとするならば、その理由はどこにあるかという點についてお答えを願いたいと思います。
殊に先ほどの説明を聽きますと、國家公共團體を被告として訴えなければならぬということになつたら、よほど——よほどどころではない、大變なことです。われわれは今まで國家を相手にして損害賠償の訴訟を起して、これほど困ることはない。というのは、こちらは個人の力でいくけれども、向うは公権力をもつて戰つている。あらゆる手段方法をもつて戰つているのであります。五年でも、十年でも、二十年でもかかつている訴訟がある。